動きを正確に伝えるには,解剖学のことばを使う
我々,スポーツ科学に携わる人間は,動きを正確に記述しなければならない.もっとも,正確に記述して口にすれば,ヒトに伝わるか?というとそれは別の問題を抱えているので,日常的に用いられる表現をしたり,あるいは何に形容した表現を使ったりすることは,もちろん望ましい.
ここで正確に伝える,という意味は「全くの誤解を生まない表現」ということを指していて,言ってみれば,足算を説明する際に,
「三百足す六十五は三百六十五(さんびゃくたすろくじゅうごはさんびゃくろくじゅうご)」
「three hundred plus sixty five is three hundred sixty five」
「Trois cent plus soixante-cinq font trois cent soixante-cinq」
と言語が通じなければ,思ったように意図が伝わらないことがあるが,それに似ている.
スポーツ科学を目指そうと思ったら,医学と同じく身体の構造,名称,機能をひたすら覚える必要があるのだが,教科書だけを見ていても覚えられそうにない.学生時代に必修科目であった,解剖学は,人体の骨・筋肉,関節など200項目の名称を答えるというもので,落ちたら再履修が必須だったので,必死だったが丸暗記であった.
オンラインで解剖学
春学期に開講している,身体運動解析ではこの解剖学の初歩の初歩,全身の代表的な骨,筋,関節,靭帯などの名称と共に,どのように運動に貢献しているのか?といったことをしょっぱなの授業で取りあげるのだが,今年は例に漏れずオンラインでの開講になったので,身体の各部位を見せながら,運動をしながら筋肉や骨の名称を教える,ということには苦労した.
大変重要な身体の部位である,腕の付け根,脚の付け根,いわゆる「肩」は,「肩峰」という部位で,「腰」・「股関節」は「転子点」といった用語で教えるにもそれがどこかを教えるには大変だ.
次に覚えるべきは,運動の明確な定義である.肘関節であれば,屈曲・伸展,これに加えて回内・回外,といったように関節それぞれの動き方には固有名称がある.「肘曲げてご覧」は簡単に誰もが理解できるが,これを正確に記述すると,「肘を屈曲してご覧」となる.「爪先を上げて」は,「足関節を背屈させて」となる.まずはこれを迷うことなく言えるようにならなければ,バイオメカニクスも生理学も始められない.
ラジオ体操第1を解剖学的な言葉で説明する
今回はこんなお題目の宿題を第1回目の授業で学生に課した.オンラインでの授業のしょっぱなということもあり,学生側もきっと乗り遅れまいと真剣だったのだろう.全員が期限に提出して,しかも皆相当精度の高い回答を寄越してきた.皆よく頭を捻って考えてきてくれた.
これは自分でもなかなか良いお題目であったと思った.

0 件のコメント:
コメントを投稿